なぜあの演説は心を揺さぶるのか? [マーケティング便りvol.43]
週明けの寒さから一変、桜も花開き、春めいた気候が心地よいです!
と、軽やかに言いたいところですが、花粉襲来の季節となりました。。。マスク着用につき、例年よりもマシだというご意見多数の中、目・鼻・喉・皮膚、コンプリートで被害を被っているのは私だけでしょうか。なぜか、特に昨日、今日と症状がひどく、背に腹は代えられぬと高級ティッシュを多用し、なんとかやり過ごしています。
1週間後には新年度となります。気持ちを新たに、痛そうなので今まで避けてきた「鼻うがい」にチャレンジしてみようか。そんなことを考えつつ、これよりコロナワクチンのブースター接種に挑んできます。どうか、軽度の副反応で済みますように。。
今回のピックアップ記事はこちらです。
当初はコメディアン出身という異色の経歴から、ポピュリズムが生み出した素人政治家として軽んじられてきたゼレンスキー大統領。しかしロシアのウクライナ侵攻以降は連日ニュースに登場し、彼が発信するメッセージには全世界の注目が集まっています。戦時下においてプロパガンダは切り離せないものですが、決意を秘めた目で真摯に語る姿は、ウクライナ国民を鼓舞し、諸外国からの支援を獲得する効果的な武器になっているようです。フェイク動画が作られたことからも、ロシアにとって脅威となっていることは間違いないでしょう。今回のピックアップ記事では、各国向けの外交演説に着目し、そのスピーチ戦略の巧みさを分析しています。
「私たちはまだここにいる。明日もそうであることを祈っている」
ロシアのウクライナ侵攻が開始されてからちょうど1ヵ月が経ち、その被害は拡大し続けています。アメリカやEU各国が亡命政権の樹立を提案する中「戦いはここで起きている。必要なのは弾薬であって、脱出手段ではない」と、提案を拒否する形で、ゼレンスキー大統領が投稿した動画が、ウクライナ国民を奮い立たせる起爆剤となった印象です。
「私が生きている姿を見るのは、これが最後かもしれない」
ドイツをはじめとする欧州各国の関係者向けに語られた、「わずか5分のスピーチ」がその心を動かし、SWIFTからのロシア大手銀行排除という、大規模な金融制裁への合意がなされたと言われています。ウクライナのEU加盟に対する慎重な姿勢は変わらずとも、「わずか5分のスピーチ」が歴史的な大規模制裁を促したわけです。まさに、超一流の交渉に値します。
そして先日、3月23日にゼレンスキー大統領は日本の国会で演説を行いました。NHKのニュースサイトなどで和訳された全文が掲載されています。記事にあるよう、今回の日本向けのスピーチにおいても、他国向けと同様に「当事者意識」を強く持たせるワードがちりばめられていました。例えば次のようなものです。
- 原子力発電所(東日本大震災での原発事故)
- 海路封鎖(海洋国家日本)
- 化学兵器(地下鉄サリン事件)
- 資源輸入国(2018年度エネルギー自給率 11.8%)
- 故郷への帰還(日本人の美徳感)
日本人が感情移入しやすい、経験済みの「痛み」をとてもよく捉えられており、日本人についてよく研究されている、そういった印象を受けました。他にも、緩急をつけた数字の用い方、約12分という短時間での構成など、「伝える」という点でお手本としたい要素が詰まっています。
かたや、プーチン大統領がウクライナへの侵攻前に国民向けに行ったビデオ演説の長さは約1時間。「今」をエモーショナルに外へ訴えかける共感型のゼレンスキー大統領とは対極に、「歴史」を基軸に自らの思想を内に植え付けています。ロシアでは子供たちに5年間かけて、上下巻からなる部厚い歴史の教科書を丸暗記させるのだそうです。我々からすると理解に苦しむ、歴史感からなるプーチン大統領のイデオロギーですが、1時間聴講できる国民レベルにあるのがロシア人、ということでしょうか。18日に行われた演説でも20万人の聴衆がいたと言われています。突如、コンサート映像に中継が切り替わるという事件も起きたようですが。。。
優れた演説をする大統領には決まって、スピーチライターが存在します。話し方や間の取り方、ジェスチャーまで緻密に計算され、その人だから伝えられる言葉を設計するのがその役割です。長引く戦火、セレンスキー大統領と共にスピーチライターもまた、ウクライナで戦っているのでしょうか。それとも、元コメディアンであり、制作会社を立ち上げたほどのエンターテイナーの素質が、この非常事態において自らのスピーチをプロデュースしているのでしょうか。いずれにせよ、動的、かつ的確に人の心を動かすための要素が詰まっているゼレンスキー大統領のスピーチ。特にターゲットの分析など、一社会人として平和的にそのノウハウを体得したいものです。